川崎(じもと)の弁護士 伊藤諭 です。
突然ですが,うまい儲け話があるんです。
聞きたいですか?
いいえ → 素直になりましょう。
はい
→ 気をつけましょう。ホントに。
失われた20年と言われる我が日本。
銀行預金の金利もミクロの世界。
大事なお金を銀行にそのまま預けておいて大丈夫ですか?
いまなら○○ファンドで年●%の運用ができますよ。
ちょっとまて。銀行や証券会社が勧める商品は,彼らが売りたい商品であって,顧客に有利な商品とは限りません。
読了したのは相当前ですが,この本で得た知識,考え方は弁護士業務でも役に立っています。
「高金利外貨定期預金」は本当に有利か
みなさん銀行の店頭で,「オーストラリアドル定期預金(3か月もの)特別金利年10%(税引き後8%)」などという広告を見たことありませんか?
ついつい今自分が使っている銀行の普通預金金利と比較してしまい,これがものすごーく魅力的な商品に見えますよね?
ほいほいとまとめてこれに申し込んじゃった方。残念でした。
ポイント1 「3か月もの」
デカデカと「年10%」とあるのは,年率表示。つまり1年預けたら10%利息が付きますよ,という意味です。3か月であれば,当然その4分の1。2.5%しかつきません。
ちなみに,ネットで検索したら,東●●●ー銀行では「1か月もの」で客寄せしてました。そうなると表示上の12分の1ですね。
では,続けて1年預ければ10%の利息がもらえるかというと,そうは問屋が卸しません。3か月経過後は,通常金利に戻ってしまいます。
ポイント2 「税引き後8%」
でも2.5%でも普通預金よりましでしょ?
と思うのは大間違い。
利息に対しては20%税金がかかり,これが源泉徴収されて天引きされます。そうすると実質2%ですね。
ポイント3 為替手数料がバカ高!
でもでも2%でも普通預金よりましでしょ?
と思うのは大間違い。
この手の商品は,円で普通預金口座に入金し,外貨に換えて外貨定期とし,満期後はさらに外貨を円に換えて出金する方法でしか受け付けていないということです。外貨そのものを持ってきて外貨定期としたり,外貨のまま出金したりということが許されていない商品です。
つまり,必ず2回(往復)為替手数料を払わなければなりません。
で,銀行の場合は,この為替手数料がバカ高い。
調べてみたらいわゆるメガバンクでオーストラリアドルに両替する際の為替手数料は,片道2円〜2.5円でした。つまり往復(円→オーストラリアドル→円)の手数料は4円〜5円ということになります。
仮に1オーストラリアドル80円だとすると,4円〜5円の手数料率は5%〜6.25%ということになります。
勘のいい方はもうおわかりですね。
一見魅力的に見えるこの商品は,2%の利息を得るために5%以上の手数料を払う預金なんですね。
ん?だれですか?円安に振れれば得するかもしれないじゃないかとおっしゃる方は。
この手の預金は途中解約すると通常金利に戻っちゃうんですよ。
もっとはるかに安い手数料でいつでも取引可能なFX口座でもやってた方がよっぽどましですね。
資金が拘束されて,手数料負けからのスタートする商品を魅力的だと思いますか?
もちろん円高に振れれば損失がさらに膨らみますね。
じゃあ,この商品を銀行が勧めるのはどうしてか?
みなまで言わないでおきましょう。
本書について
本書では上に上げた例の他に,あんな投資信託や,こんな年金保険なんかもそのトリックについて説明しています。
金融商品を選ぶときは,そもそもどういう商品なのか,運用するとどうなるのかを具体的にシミュレートする。
人から勧められたら,どうして勧められたのかを冷静に検討する。
過度に有利そうな商品については警戒する。
だまされたと思ったら弁護士に(笑
が重要です。
さて,この著者はいまではベストセラー作家です。
最近の著作は編集者さんが優秀なのか,著者が売れるコツをつかんできたのか,タイトルも装丁も売上を意識したものになっています。
でも,私が一番好きなのは,最初に読んだ「金融広告を読め」です。
ところで,最初の質問に素直に「はい」と答えた方
「○○だけダイエット」っていうのも好きじゃありません?