川崎(じもと)の弁護士 伊藤諭 です。
しつこく会名変更ネタで申し訳ございません。
会名変更派の根拠の一つ(というよりももっとも大きな理由)として,横浜弁護士会という名称が「名が体を表していない」ということが挙げられていました。
これに対する変更反対派の反論として,「PR不足だ。きちんと説明すれば足りる。」という意見が出されていました。
私はこの賛成派の根拠というのが,反対派の方にとっていまいちピンと来ていなかったのではないかと思っています。
この「名が体を表していない」ということについて,私なりの解釈をかみ砕いてみたいと思います。
誰にとっての会名変更か
賛成派にとって,会名というのは「看板」の変更であって,あくまでも利用者にとってわかりやすい名称にしようという発想があります。
しかもここでいう「わかりやすい」とは,当弁護士会を「知らない人」にとってわかりやすいかどうかということを考えなければなりません。
知っている人を基準にして 「わかりやすいか」ということを議論しても何の参考にもなりません。
名称の不一致による利用者のストレス
利用者にとって,自宅に近い,勤務先に近いなど,自分にとって地理的に利便性の高い弁護士を探したいという方がいたとします。
直接個別の弁護士にアクセスできる方ばかりではないし,一見では心配だからという理由で弁護士会に地元の弁護士を紹介してもらいたいと考えるのは一般的だと思います。
そこで,横浜市以外の神奈川県民(ここでは川崎市民とします。)利用者がどこの弁護士会にアクセスすればいいかを検討するという場面を設定します。
川崎の人が「弁護士会」の一覧を見て,瞬時に川崎の弁護士がどこの弁護士会に属するのかがわからないということは,その人にとって非常に高いストレスを強いることになります。
まず弁護士会の一覧をみて,「川崎」ずばりの名称がないことがわかります。これはしかたないでしょう。
そこで,その上位概念である「神奈川(県)」という名称を確認しようとしますが,それもありません。とすると,そのさらに上位概念を探すべきかどうか近いところを探すかどうかで迷います。
一覧を改めてみると,どうやら1府県について1つの弁護士会があるだろうことがわかりました。
そうした検証を経て初めて,どうやら「横浜」というのがもっとも近そうだという結論にいたるのです。
このような解釈を「利用者に」させることは,大きなストレスになることは容易に想像がつきます。
少し例を変えましょう。
ある定食屋で,あなたは「豚丼」を食べたいとします。
この定食屋はタッチパネル形式の食券制で,まず上位概念の大分類を選ぶと,その次に具体的なメニューを選ぶという方式になってます(最近店舗数が増えている●●チカラめしみたいですね。)。
あなたはお金を入れて,大項目を選びます。
大項目に並んでいるメニューは
「定食」
「ラーメン・そば」
「カレー」
「ステーキ」
「牛丼」
「サイドメニュー」
「飲み物」
などなど
となっております。
あなたは券売機の前で悩みます。
大項目のうち,豚丼がどこに含まれるか分からない。
もっとも近いのは「牛丼」かもしれないが,どう考えても豚丼は「牛丼」に含まれるものではなく別物である。
でもどう考えてもこれしかいないよなあ。
などと考えて勇気を振り絞って「牛丼」をタッチしたところ,
「牛丼並」
「牛丼大」
「豚丼並」
「豚丼大」
「親子丼」
「カレー丼」
が出てきました。
あなたは思います。
「わかりにくいよ!(他はわかりやすいのに)」
不審に思って,もとの大項目の画面を見てみました。
そうすると「牛丼」の表示の下に
「牛丼は,すべてのどんぶりを包括する名称です。」
と小さく表示されていました。
あなたにとっては初めての店です。この店に好印象を抱きますか?不親切に見えませんか?
この大項目の表示が
「どんぶり」
となっていれば迷うことはなかったはずです。
この店ではどんぶりの代表者が「牛丼」だということで「牛丼」の表示を大項目にしていたのです。
この表示が利用者に立場に立った表示かどうかを考えましょうということです。
「横浜弁護士会」の名称の意味
現在の「横浜弁護士会」という名称を上の例にならって考えてみます。
「大項目」の名称は,本来小項目をすべて包含する名称になっていなければなりません。利用者に解釈をさせるのは,親切なネーミングではありません。
現在の「横浜」は,小項目の代表的なものを,他の包含しない小項目まで代表した名称になっているわけです。川崎も相模原も小田原も横須賀も,「横浜」に代表されるとみなして名称を付けているのです。
これを的確な「大項目」に見合った小項目をすべて包含した名称にしましょうというのが,会名変更派の「名が体を表す」名称にしようという意見なんです。
PRが足りないという方は,上の例で
「牛丼はすべてのどんぶりを代表する名称です」
ということをもっと周知させよう,という土台無理な(不自然な)要求をしているをしているものだと思います。
説明すればするほどおかしさが際立ちませんか?
やはり,神奈川県の弁護士を代表する名称としての「横浜弁護士会」は変更が必要だろうと思っております。
(業務連絡)
反対派の先生方へ
前回の総会で会長から「ノーサイド」が宣言されましたので,別に感情的・心理的な対立をあおるつもりは全くありません。これからも「横浜弁護士会」の一員として微力ながらの貢献はしたいと思っております。
ただ,他方,「機が熟して」実が落ちるように会名変更を実現するためにはこうした事実を一般に知っていただく必要があると考えてのものですので,どうかご理解のほどよろしくお願いします。