※このエントリーは話題のニュースから着想を得ておりますが,派生する法律問題やアイデアは全くのフィクションです。
あくまで一般論として私が考えた内容ですので,特定の事件について予想したり,意見を述べたりするものではありません。
先日,自分が出生直後に,同日に生まれた別の赤ちゃんと取り違えられたとして病院に対して損害賠償を求めた裁判で,病院の責任を認める判決が出されました。
この裁判の原告男性(仮にAさんとします)の生い立ちと,間違えられたBさんの境遇が非常にコントラストが強かったことが,マスメディアにとってニュースバリューが高かったようで,いろいろな報道がなされています。
親子関係はどうなる!?
ただ見落としがちなのが,この裁判はあくまでも損害賠償請求だということ。
この判決をもって当然にAさんが,Bさんの(育ての)親の子であることが確認されたことにはならないし,Bさんが,Aさんの(育ての)親の子であることが確認されたことにもなりません。
真実の親子関係に戻すには?
そこでAさんは,Bさんの育ての親に対して,親子関係確認請求訴訟を提起することになるかと思います。Bさんの育ての親が既に死亡している場合には,検察官を被告とします。
これが認められると,Aさんは,Bさんの育ての親の子になり,AさんとBさんが兄弟ということになります。
しかし,AさんとBさんは生後まもなく入れ替わっているとしたら,Bさんはその育ての親と親子関係がないはずです。つまりAさんとBさんが兄弟であるはずがなく,結論としておかしなことになります。
BさんはAさんの育ての親に対して親子関係確認請求訴訟を提起すればいいのですが,それがBさんにとって好ましくないと考えれば,自らそのようなことはしない場合もあり得ます。
そうすると,利害関係人として,Bさんの育ての親の子(AさんやBさんの「兄弟」)などが,BさんとBさんの育ての親との間に親子関係が存在しないことの確認を求める訴訟を提起することが考えられます。
問題はこれがすんなり認められるかということです。
Bさんはこれまで(育ての)親の子として生活してきたわけですから,生物学的なもの以上に,社会的に親子としての実態が形成されています。これを何十年も経って,実は親子ではありませんでした,といわれてBさんが納得できないケースも当然あるでしょう。
下級審の判断においては,DNA鑑定よりも親子としての生活実態を尊重した事案(大分地裁平成9年11月12日判決など)もありますが,あまり一般化はできないと思われます。
相続関係は?
また,仮にBさんの両親について遺産分割協議が終わった後で,AさんがBさんの育ての親の子供だったことが発覚した場合は,Aさんは,Bさんの育ての親の相続人であるにもかかわらず遺産分割協議に加わることができなかったわけですから,遺産分割協議のやり直しを求めることができそうです。
また,Bさんがこの遺産分割にかかわっていたら,本来相続人でない人が参加していたことになりますので,やはり他の兄弟から遺産分割協議のやり直しを求めることになりそうです。
このように,少し考えただけでもいろんな問題に飛び火しそうですね。
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