川崎の弁護士　伊藤諭です。 休日に子供たちを図書館に連れていくのに最近はまっています。 これまで図書館は、試験勉強だったり涼みに行ったりとあんまり本来の活用をしていなかったのですが、本を借りて読むって便利ですね。普段なら買わないような本にも手を伸ばせるし。まあいまさら感満載ですが。 ということで、たまたま手に取った本がこちら。 保護者クレーム

保護者クレームはメール活用でゼロになる

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米田 昌弘 幻冬舎 2014-03-03
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学校現場からみた保護者からのクレーム対応についての本です。
職務上、どうしても話の通じにくい方、ご不満を持たれる方というのは一定数存在しますので、何かの参考になればという思いで読んでみました。
結論としては、読んでよかった、そんな一冊です。
ただし、この本は、この著者の経営する会社のメール配信サービスに対する広告的位置づけでもあると思いますから、それをお含みください。

クレームを軽視していないか

学校現場においてのクレームが日常茶飯事であることは容易に想像できます。
ところで、教員側の自己分析として、そのクレームの原因について、（こちら側の）配慮不足、（先方の）勘違い、いちゃもん、クレーマー、その他と分類したところ、「配慮不足」と回答した割合は、ほかの業種では概ね50％前後だったのに対し、教育分野においては31.2％ともっとも低い数字でした（「学校問題解決のための手引き」）。
自己分析が当たっているかという点もさることながら、仮に大多数が、先方の「勘違い」や「いちゃもん」だったとしても（むしろ、そうだからこそ）保護者の要望を一方的に理不尽なクレームと決めつける傾向があるのではないかと筆者は言っています。
また、教員の特徴として、子供たちを指導し統率することはプロであっても、大人同士の対応や説明が苦手な人が少なくないという分析もあります。
こうした対応がよりクレームを生むという悪循環に陥ります。

コミュニケーション不足が苦情を生む

 一見明らかに不合理なクレームであっても、苦情が深刻化するのを防ぐことができることがあります。
「通学時間帯は、通学路は全て通行止めにしろ」というクレームに対する先生の対応で深刻化するケースが参考になりましたので引用してみます。
パターン①
保護者「通学時間帯は、通学路は全て通行止めにしろ。」
先生「難しいとは思いますが、一度学校で検討してみます。」
−後日
先生「校長、副校長とも相談しましたが、やはり通行止めにすることはできませんでした。」
保護者「最初は検討するといったじゃないですか。」
先生「いえ、ですから難しいとは申し上げたつもりですが…」
保護者「回答を待っていた時間は何だったんだ！？」
パターン②
保護者「通学時間帯は、通学路は全て通行止めにしろ。」
先生「そういったことは、警察に相談されてはいかがですか？」
保護者「何だ、その対応は！バカにしているのか！」
パターン③ 保護者「通学時間帯は、通学路は全て通行止めにしろ。」 先生「そういったことは、学校の権限ではできませんから」 保護者「子供の命に関わることを放っておくのか！」
先生の対応としては、どれもやってしまいがちですね。
パターン①は、先生はダメ元で（というよりも断る口実として）「検討する」という言い方をしているのですが、保護者側は勝手に前に「前向きに」という言葉を補って期待してしまうんですね。 その後、先生としては予定通り断ったのだけれども、保護者としては期待を裏切られた、ウソをつかれた、信用できない、という評価になってしまいます。
パターン②は、学校に相談している保護者の心情を全然理解しない対応です。 一見正論ですが、保護者の側からは、親身になってくれない、見下しているという評価をされてしまいます。
パターン③も、それはその通りなのですが、何の解決にもなっていません。
では、どうするべきだったのか。
保護者がこのようなクレームを言い出す背景について、「何か心配なことがありましたか。」などと気遣いながら、くわしく聞き取るべきだったのです。
そうすると、この保護者から、「先日、大型車がすごいスピードで子供の脇を走り抜けていった」といった具体的な事情がでてくるわけです。
コミュニケーションを取ることで、対応策が見えることもあるし、何より会話をすることで、先生の側が真摯に対応してくれているという安心感、信頼感を与えることができます。
教員だけではなく、私たちのような職業にも参考になる話でした。
  

目的の共有＝子供を守る

 子供の上履きがなくなったことに対して保護者がいじめではないかと心配し、担任に相談したとケースがあったようです。そのケースでは、上履きがなくなったこと自体は把握していて、既にクラスみんなで探したけれども見つからなかったそうです。先生は、保護者の相談を受けて「上履きがなくなった子がいます。見つけたら先生に教えてください」というメールをクラスに配信しました。保護者はそれを見て、先生がきちんと対応してくれていると安心したそうです。
そこで担任が「探しておきますね」だったり「そのうち見つかりますよ」といった対応をすると、保護者の側では本当に対応してくれているのかが見えてこないため、さらなる問い合わせやクレームにつながっていたかも知れません。
また、メール配信システムがもっとも威力を発揮するのが緊急時です。
緊急時にはあらゆる連絡ツールがダウンしますが、「弊社」のサービスは東日本大震災のときにはほとんど遅れませんでした、とのことです（なお、宣伝するつもりはありません。一般的にはメールよりもTwitter等のほうが有用だったといわれてますね。）。

まとめ

メール配信サービスのあたりは、少し宣伝の香りがして紹介するのがはばかられましたが、コミュニケーションの重要性という意味ではいろいろな気付きをいただくことができました。
特に学校の先生は原則として生徒や保護者を選択することはできないし、生徒や保護者も先生を選択することができないという、言ってみれば逃れることのできない人間関係にあります。
そうした人たちのコミュニケーションスキルを体得することは、どのような職業にも応用できるのではないかと思います。
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