川崎(じもと)の弁護士 伊藤諭 です。

本日は珍しく法律の話を。

破産とそれに続く免責とは,平たくいうと,財産については,すべてお金に換えて,債権者のかたに平等に分配しますので残りを勘弁してくださいという制度です。

そうはいっても,全財産を持って行かれては,最低限の生活も維持できなくなってしまいます。
そこで法律は,最低限生活に必要な財産については差し押さえてはだめですよと定め,これらに当たるものについては,破産をしても処分されない扱いになっています。

問題は「最低限生活に必要な財産」とはどのようものがあるかです。

そのなかで中小企業経営者や個人事業主の方々にとって是非とも知っておいていただきたいものについて説明したいと思います。

中小企業退職金共済(中退共)

中小企業が,従業員の退職金を自ら用意することは資金繰りとしてもたいへんです。そこで,従業員の退職金を事業者が毎月積み立て,退職する従業員がいた場合には共済から退職金が支払われる制度です。 通常の退職金は賃金同様,原則4分の1については差し押さえることが可能ですが,中小企業退職金共済を受給する権利は法律上差し押さえることができないことになっています。

 

小規模企業共済

中退共が従業員のための退職金制度であるのに対して,個人事業主や中小企業の役員自身の退職金のための共済が小規模企業共済です。 月々一定の掛け金を共済に掛けておくと,事業主などが,廃業はじめ第一線を退くときに,共済の給付を受けられます。

 

各種の年金

厚生年金や国民年金などです。

 

何を言いたいか

中退共や小規模企業共済などは税制上のメリットも大きく,加入されている方も多いのではないかと思います。

しかし,ここでフーンで終わってはいけません。

ここで私たちが何を言いたいか。

それは,「いざというときでもこうした財産に手を付けてはいけない」ということなのです。

今は事業が好調な場合でも,かならず浮き沈みはあります。

つなぎの資金がどうしても必要になったとき,一定のお金を引っ張ってこれらるこれらの共済にどうしても手を付けたくなるものです(解約にはそれぞれ要件があり,いつでも解約できるとは限りません。)。

これら撃てる弾をさんざん撃ち尽くして,刀折れ矢が尽きた段階で弁護士に相談される事業者の方が非常に多いのです。

破産費用も必要ですが,破産後の生活も重要です。 破産を無事にすることができれば,確かに借金はなくなりますが,先に述べた共済なども解約をしてしまえば残りません。

本来従業員に対して払うことができた退職金もなくなってしまうかもしれません。 万が一に備えるのも事業者のつとめです。

(本エントリーは過去に私が別ブログで投稿した内容を再編集したものです。)