川崎(じもと)の弁護士 伊藤諭 です。

少年の刑事事件や耳目を集める出来事が起こると,少年法に対する批判や改正論議がネット上などで巻き起こることがあります。

少年の実名報道の問題などのほかに,少年犯罪の減刑に対する批判があるようで,近時,改正の動きも報道されるところです。

少年法の厳罰化検討 有期刑引き上げ、9月にも諮問 – 中国新聞

少年事件の流れについては,おおむねつぎのとおりです。

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(検察庁ホームページより引用)

少年法上,18歳に満たない者に対して死刑を科すべきときは無期刑を科し(少年法51条第1項),無期刑を科すべきときは有期の懲役又は禁錮を科すことができる(同第2項)ことになっています(18歳以上20歳未満の少年については適用はありません。)。

また少年には,不定期刑という少年法独特の処断刑(同第52条)があります。

このように全体に刑罰を科す際には,全体に刑が軽くなっていることは間違いありません。

では,成人が犯した事件のほうが少年が犯した事件よりもペナルティが重いかというと必ずしもそうとは言えません。

成人が逮捕された場合の手続はこちら

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(検察庁ホームページより引用)

少年が逮捕された場合の手続はこちら

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(検察庁ホームページより引用)

初版の軽微事件の場合,成人であれば,逮捕から最大23日以内に処分を決めなければなりません(処分保留による釈放を除く)。そこで不起訴や在宅での起訴になれば,そこで釈放されます。

しかし,少年の場合は全件について家庭裁判所に送致されることになっていますので,逮捕された後最大23日で不起訴で釈放ということはありません。通常,家庭裁判所に送致された後は,観護措置決定がなされ,少年鑑別所に身柄を移されることになります。ここで最長8週間過ごしたのち,少年審判を受けることになります。そこで少年院送致などの審判がなされることになりますが,ふたたび検察官送致になる場合もあります(一定の重大事件の場合は,原則検察官送致です(いわゆる逆送))。そうなるとそこでふたたび10日間勾留されたのち,ようやく起訴不起訴が決まります。起訴されて大人と同じ裁判を受けても,そこでさらに家庭裁判所での保護処分が相当であるとの決定がなされるともう一度家庭裁判所に移送されます(少年法55条)。

このとおり,成人の場合は,遅くとも逮捕後23日程度でその後の目処がつくことになります。起訴されても執行猶予判決がなされればその時点で釈放されます。

他方,少年の場合,処分を決めるのに家庭裁判所での観護措置決定がなされることが多いことから,事件自体が軽微であっても家庭環境その他の事情により身柄の解放まで相当時間がかかる場合があります。

個人的な実感ですが,軽微事件で成人であれば不起訴ないし起訴されても執行猶予が見込まれるような事件については,むしろ少年のほうが,身柄の解放までに時間がかかっているという印象があります。

身柄拘束は事実上のペナルティと考えれば,軽微事案においては少年と成人の逆転現象とみることもできます。

少年の皆さんは,自分は未成年だから刑が軽いと犯罪を軽く考えるのはやめましょう。