川崎(じもと)の弁護士 伊藤諭 です。

曖昧な日本語の私

契約書の作成やチェックをしているとき,もっとも重視することの一つとして,文章の意味,解釈に曖昧な点がないかどうかという点があります。

日本語というのは本来物事を曖昧に表現することによって,受け手がそれぞれのイメージを膨らませて,各人各様の解釈を楽しむという風習があります。

また,主語を省略しても文章が成立し,前後の文脈から意味を類推することもままあります。

さらに方言になると,さらに省エネをします。

「か,け。わ,い」

(さあ,食え。オレは要らないから。)

南部弁講座 (なお,わたしは津軽弁はまったくわかりませんので訳の真偽について保証いたしかねます。)

同音異義語が多いことを利用して,掛詞(かけことば)として,1つの言葉に複数の意味を乗せることもあります。

また,隠喩のように全然関係ない表現でまったく別のものをイメージさせることもあります。

「急ぐとも 外に漏らすな 吉野山 桜の花も 散れば汚し」

(近くのビルの男性用トイレに張ってあった狂歌? 詠み人知らず)

このような日本語の美風というのが法律の世界ではNGなんですね。野暮ですね。

「A及びB並びにC」と「A,B及びC」の違いが分かりますか

言葉に可能な限り2つの意味を持たせない法律の世界では,接続詞などにも使用するルールがあります。

一見(一読?)同じような意味になりそうな

「A及びB並びにC」

{A,B及びC」

とでは実は意味が違います。

わかりますか?

「A及びB並びにC」というときは,「A及びB」とCが並列で,AとBはさらに小さいレベルでの並列になります。

わたしは,今日,カツ及びなすカレーならびにきつねうどんを食べました。

と書けば,

「カツとなすの入ったカレー」と「きつねうどん」を食べたことになります。

「A,B及びC」というときは,A,B,Cがすべて同じレベルの並列になります。

私は,今日,カツ,なすカレー及びきつねうどんを食べました。

と書けば。

「カツ」と「なすカレー」と「きつねうどん」を食べたことになります。

食堂で注文するときは,正しい日本語を使いましょう。さもないと,予想外に大量のカロリーを摂取することになるかもしれません。