もし逮捕されてしまったとき、どうしたらいいかまったく見当もつかない。
これからどうなるかもわからない。
だからまずは弁護士に来てほしい。きわめて健全な発想です。
そのようなときのために各弁護士会には「当番弁護士制度」というものがあります。
初回の接見(面会)について無料で(通常24時間以内に)弁護士が来てくれるという制度です。
弁護士の知り合いがいない人はとりあえず「当番弁護士を呼んでほしい」と伝えましょう。
私たち弁護士は、この当番弁護士制度で出動がかかると、警察署に面会にいって話を伺うことになります。
ところで、面会をしてみると、すぐにでも弁護人として弁護活動を開始した方がいいという方がもちろんいらっしゃいます。
よくあるのが、通勤時間帯の痴漢の容疑などの場合。
このままだと会社を休むことになるし、そのような状態が続けば仕事自体を続けることが危なくなる人はよくいらっしゃいます。
そんなとき、ご家族などの協力が不可欠なのですが、ご本人から伺った家族の連絡先に
「お宅のご主人がいま逮捕されて○○警察署にいらっしゃいます。示談金と弁護士費用に充てるため○○万円程度ご用意していただければ。」
という趣旨のお電話を差し上げることになります。
ただお察しの通り、イマドキこんな電話をして、はいそうですかと応じてくれるはずがないですし、自分でも詐欺そのまんまだなと思いながら連絡しているわけです。
朝に逮捕されていると、夕方まで本人が帰宅していなくてもまったく不思議じゃなく、そもそも逮捕されていることを知らないご家族もいらっしゃいますので当然です。
中には、詐欺犯と決めつけてこっちをからかってくる方もいらっしゃいます。
「うちの子はペンタゴンで働いているはずですけど」(ウソつけ、さっき警察署で会ったぞ)なんて不毛なやりとりになりがちです。
弁護士(を語る(≠騙る)もの)から連絡が来たときは、ちょっとだけ「本物ではないか?」というチェックだけしてみていただけますようお願いします。
※このエントリーは、実際に逮捕された人のために協力してほしいという目的で作成した、「このような確認をして信用してください」という趣旨のものです。現実の詐欺の手口は巧妙化しておりますので、個別の事案で最終的なご判断をするのは、みなさまの責任でお願いいたします。
弁護士が実在するか確認する
架かってきた電話で、弁護士のフルネームと登録番号を確認してください。
その上で、「日本弁護士連合会」(日弁連)の弁護士検索でそもそも実在の弁護士かどうかを検索してみてください。
弁護士は必ず日弁連に登録がありますので、ここで引っかからない弁護士はいません(まれに登録後数日しか経っていない弁護士だと検索が間に合わないケースもありえますが、そのような弁護士が当番弁護士で出動することはまず考えられません。)。
弁護士の事務所も電話番号もわかりますので、そこに折り返して確認してもらっても結構です(弁護士が警察署から携帯電話でかけてきているケースだと、直後に確認しても、事務所の人が認識していない可能性はあります。)。
実際に逮捕されているかどうかを確認する
ご本人が○○警察署にいるということであれば、○○警察署に直接確認してみてください。
「○○警察署」の連絡先は、ご自身で検索して調べてみてください。
電話で言われた連絡先だと、詐欺だった場合、グルになっている者につながってしまうことになります。通常、警察署の電話番号の下3桁は「110」(下4桁が「0110」)になっていることが多いです(まれに例外があります。)。
そこの警察署の「管理係」につないでもらって、在監しているかどうかを聞いてみるといいとおもいます。
弁護士に可能な限り直接面会する
信用できそうだとなった場合、弁護士に対して、可能な限り直接面談して、詳しい説明を受けてください。弁護士としても、面談しないままお金を振り込んでほしいとは思いませんし、今後の弁護活動のためご家族から事情を確認することは必要不可欠ですので、二つ返事で了解してくれるはずです。
弁護人を選任するのはご本人ではなく一定の範囲のご家族でもできますから、事情によっては、ご家族と面談した上でそのご家族と契約し、弁護活動を行っていくことも考えられます。
他方、例外的なケースとしては、ご家族と利害が対立する場合。
ご家族が被害者だったり、ご家族が共犯者である(と疑われる)場合、そのご家族との面談は回避する可能性があります。
逮捕されている人に直接面会する
警察署にご本人がいることが確認できたら、可能な限りご本人と面会をしてください。面会には通常予約が必要になります。予約時間や予約方法については警察署でご確認ください。
15分程度しか時間がありませんが、弁護士に依頼する意思があるかどうかのご確認をしていただければ、話が早くなります。
なお、「接見禁止」という決定がでている場合は、面会ができない場合があります。この場合でも差し入れは可能ですので、確認してみてください。
くどいようですが、ここに記載した内容は、「弁護士からの連絡」が詐欺ではなく本物である可能性を見定めていただいて、ご本人の利益になる活動をするチャンスをつぶしてしまわないようにという趣旨に基づいています。
実際にかかってきた電話が本当に詐欺であるかもしれませんし、また、詐欺でないと分かった上で協力をしないという判断もあり得ると思います。最終的なご判断はそれぞれ各自で行っていただきたくお願いいたします(ほかの弁護士にその相談をしていただいても結構です。)。