今回は、取引先との関係における企業が行うべきコロナウイルス対策です。
Q1 新型コロナウイルスの影響で工場を閉鎖したところ、取引先への商品供給が遅延した。この場合、取引先から損害賠償を請求されるのか?
A1 されないのが原則ですが、感染防止対策を怠らないことが重要です。不可抗力によるサービスの制限や中止に関しては、契約書や約款の確認を。
会社の責任ではない事情で商品の供給が遅延した場合は、損害賠償を請求されません(民法415条)。新型コロナウイルスの影響は、原則として不可抗力と考えられますので、損害賠償を請求されないことになると考えられます。
しかし、感染防止対策を怠っていたなど、会社の責任といえるような事情がある場合は、請求を受けることがあり得ますので注意が必要です。
また、不可抗力によってサービスの提供を制限又は中止する場合は、どういう場合に制限や中止ができるのかを、契約書や約款に盛り込んでおくべきです。
契約書や約款の中には、不可抗力条項として定められていることが多いですが、その免責範囲が狭すぎることがありますので、条項の確認や見直しをしておくとよいでしょう。
そして、不可抗力条項があったとしても、当該条項に基づいて、いきなりサービスの提供を制限すると、取引相手に対して不意打ちとなり、トラブルの元となりかねません。そこで、不可抗力条項と併せ、サービスの提供制限についての事前の告知方法も定めておくとなお良いといえます。
Q2 イベントのために会場を使用する契約をしたが、新型コロナの影響でイベントが中止となった場合であっても、会場の使用料を支払わなければならないか?
A2 支払う必要がないのが原則ですが、訴訟になった場合は、一定額の支払義務を負うこともあります。
緊急事態宣言や外出自粛要請が出ている現状に鑑みますと、会場の提供義務は、社会通念上履行不能といえる可能性が高いものと思われます。
そしてその場合、新型コロナウイルスの影響は、当事者のいずれの責任でもない場合に当たりますから、原則として、会場の使用料を支払う必要はありません(民法536条1項)。
もっとも、裁判となった場合には、損害の公平な分担という理由で、一定額の支払義務が認められることがありえますので、注意が必要です。
Q3 オーナーをしているテナントの1つで新型コロナウイルスへの感染が判明した場合、他のテナントに告知すべき義務があるのか?
A3 義務はあると考えられますが、告知すべき範囲は具体的ケースによります。
賃貸借契約上の付随義務として、オーナーは、安全に施設を利用させる義務を負うと考えられます。このような義務の一環として、安全確保のための告知は必要であるといえます。
もっとも、施設内で感染者が出たということをなるべく知られたくないという事業者の立場にも配慮し、一概に施設の全範囲に告知すべきとまではいえず、具体的ケースに応じて、告知すべき範囲を画定していくことが必要です。
小規模ビルなどで、全館共通のエレベーターを使用しているといった場合は、全テナントに告知する必要があると思われますが、大規模の高層ビルで、エレベーターも階層で分かれているといった場合には、必要な範囲で足りるという判断もあり得ます。
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