2019/02/26 記事作成
2020/08/11 更新
いよいよ遺言づくりです。
まずは自筆証書遺言。紙とペンがあればすぐに作成できます。
最終的に公正証書遺言を作ろうという方も、まずは自筆証書遺言を作成することをオススメします。
公正証書遺言は思い立ってすぐに作れるわけではありません。その間に何があるかわかりませんからね。
目次
自筆証書遺言は、どのように作ればいいの?
自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)とは、遺言をしたい人(遺言者)が、自分自身で全てを書く遺言です。
自筆証書遺言は、自分自身で作成することができるので、手間も費用もかからない反面、しっかりと要件を満たさないと遺言が無効になる可能性もあります。
せっかく遺言を作成しても、無効となってしまっては意味がないので、自筆証書遺言の要件を確認しておきましょう。
自筆証書遺言を書く際に守ること
全部自分の手で書く!
遺言書の中身すべてを遺言者自身が書く必要があります。
財産目録以外は、全て自分自身で書かなければなりません。
代筆はできません。
また、財産目録の部分以外は、ワープロなどで遺言内容を作成することも認められておりません。録音や録画で遺言をすることもできません。
遺言書の具体的な内容については、誰に、どの財産を、どれだけ相続させるのかなど、他の財産と区別できるように特定して、分かりやすく明確に書きましょう。
さきほど「財産目録の部分以外は」と書きましたが、裏を返せば、財産目録は自分の手で書かなくてもいいのです。
財産目録とは、財産の特定をする部分のことをいいます。
どんな財産があるかが判別できれば、いろんな書き方が認められるようになりました。
詳しくは、ここを参照してください。
日付を忘れない!(「●年●月●日」まで書く!)
日付を自書する必要があります。
遺言作成当時認知能力などに争いがある場合や、内容の矛盾する複数の遺言があった場合、新しい遺言の効力が優先することになるので、日付によって時期を判断することになります。
そのため、遺言書には、年月だけでなく、日付までも書かなければなりません。
「平成○年○月吉日」と記載されている自筆証書遺言は、無効とされた判例があります。
氏名を書くことも忘れずに!
氏名は、誰が遺言書を書いたのか判断するために、要求されます。
誰の遺言かを特定することができ、他者との混同が生じなければ、氏または名のみでも良いと判断した古い判例がありますが、無駄な争いを避けるためにも、フルネームで氏名を書いた方が好ましいです。
なお、自筆ではない財産目録を添付した場合、全てのページに自書による署名と押印が必要になりますので、忘れずに。
上の画像を参考に。(なお、財産目録に日付までは求められていません。)
押印も大切!
遺言書には、押印しなければなりません。
氏名と同様に、遺言者を特定する機能と遺言者の意思を確認するためです。
押印は、必ずしも実印である必要はなく、三文判でも構いませんが、「誰の印鑑か」という争いを避けるためには実印を使用した方が好ましいです。
自書ではない財産目録にすべて押印が必要なのは、氏名の自書するのとおなじです。
「花押」が押印と言えるかどうかが争いになった事案がありました(最高裁は無効と判断しました。)が、素直に押印しましょう。
自筆証書遺言を訂正するには
自筆証書遺言の内容を加除その他の変更をする場合には、法律の規定に従った訂正方法にしなければなりません。
まず、訂正場所を指示し、これを変更した旨を付記します。そして、付記した部分に署名したうえ、その変更の場所に押印をしなければなりません。
たとえば、このような条項を訂正する方法として、
変更した箇所に押印して訂正した上で、末尾に「第2項記載中「2」の字句を「3」に訂正した。川崎太郎 印」と記入する方法や、
変更した箇所に押印した上で、欄外に「●字加除(文字数が違うときは「●字削除、▲字挿入」) 川崎太郎」というかたちで署名する方法があります。
この方法による訂正をしなければ、訂正の効力が生じることはなく、加除訂正がされていないものと判断されてしまいます。
新しい遺言を作れば、古い遺言と矛盾する範囲で新しい遺言が有効になります。大幅な訂正であれば、新しい遺言を作ってしまうのも手です。
共同遺言の禁止
共同遺言とは、2人以上の者が同じ書面で遺言をすることです。
夫婦で1つの遺言書に遺言をしたいという思いもあるかもしれませんが、共同遺言は禁止されており、無効になってしまうので、注意しましょう。
忘れがちな「検認」
遺言者が死亡したら、検認の手続きをする必要があります。
遺言書を保管している方や遺言書を発見した相続人は、家庭裁判所に検認の請求をしなければなりません。
検認とは、相続人に対して、遺言が存在すること及びその遺言の内容を知らせ、遺言書の形状、訂正の状態、日付や署名等遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造等を防ぐための手続きです。
あくまで遺言書の存在、状態や内容を確認にする手続きであり、遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。
できあがったら法務局に預ける(自筆証書遺言保管制度)
これまでの問題点
これまでは、ご自身で作成された自筆証書遺言は、ご自宅等で保管されることが多く、遺言書の破棄、隠匿、紛失、偽造といった問題がありました。
また、家庭裁判所における検認を経なければならないという、手続上の煩雑さもデメリットでした。
保管制度でどうなる?
遺言者は、あらかじめ自筆証書遺言を法務局に預けることができます。この時、法務局は、原本を保管するとともに画像データ化して保存してくれます。さらに、遺言書の形式的要件を満たすかをもチェックしてくれます。
これにより、遺言書の破棄、隠匿、紛失、偽造が防止できるのみならず、家庭裁判所における検認が不要というメリットがあります。形式要件不備による無効を回避できるという点も重要です。
但し、この時のチェックは、形式面のみであり、内容面には及ばないので注意して下さい!
保管申請の流れ
遺言者の方が法務局に保管を申請する手続きの流れは、以下の通りです。
遺言書を作成する
注意事項に従う必要があります(四方の余白などが指定されています)。
保管場所を決める
保管申請ができるのは、次のいずれかを管轄する遺言書保管所(法務局)です。
ア 遺言者の住所地
イ 遺言者の本籍地
ウ 遺言者が所有する不動産の所在地
申請する
申請書や遺言書の他、次の添付書類が必要です。
ア 住民票の写し等(本籍の記載のあるもの)
イ 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証等)
ウ 手数料 1通3,900円(分の収入印紙)
※なお、遺言者本人は、保管申請の後、預けた遺言書の閲覧や返還を請求することができます。
・必要書類 本人確認書類(運転免許証等)
・手数料 モニターによる閲覧(1,400円分の収入印紙)
原本の閲覧(1,700円分の収入印紙)
返還(無料)
相続開始後はどうなる?
遺言者の方がお亡くなりになった後(相続開始後)、相続人(の他、遺言執行者や受遺者等)は、全国の法務局(遺言書保管所)で、次の3つを請求することができます。
⑴ 遺言書が保管されているか否かの証明書の発行
ア 添付書類
遺言者の死亡が確認できる戸籍(除籍)謄本
請求者の住民票の写し
イ 手数料
1通800円(分の収入印紙)
⑵ 遺言書の内容の証明書の発行
ア 添付書類
法定相続情報一覧図の写し(住所記載があるもの)
※法定相続情報一覧図の写しに住所記載がない場合、又は、そもそも法定相続情報一覧図の写しがない場合は、別途相続人全員の住民票の写し等の書面が必要となります。
イ 手数料
1通1,400円(分の収入印紙)
⑶ 遺言書の閲覧
ア 添付書類
請求者の顔写真付きの身分証明書(運転免許証等)の提示
イ 手数料
1回1,400円(分の収入印紙、モニターによる閲覧)
※遺言書の原本の閲覧の場合は、1回1,700円かつ、原本が保管されている遺言書保管所でのみ閲覧することができます。
まとめ
自筆証書遺言の保管制度は、
・遺言書の破棄、隠匿、紛失、偽造
・家庭裁判所における検認
・形式要件不備による無効
を回避するメリットがあります。
しかし、本文でも申し上げましたように、内容面のチェックは行われません。弊所では、自筆証書遺言のリーガルチェックも行っております。
本ホームページ上部の「お問い合わせ」から、お気軽にお申し込み下さい。
なお、法務省の下記サイトにおいて、本制度の情報が公表されています。
こちらも併せてご参照下さい。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html