これまでなんども「公正証書遺言」という言葉が出てきました。
自筆証書遺言よりもしっかりしてそうなイメージですが、公正証書遺言って簡単に作れるのでしょうか?
つくるとどんないいことがあるのでしょうか?
そもそも公正証書って?公正証書遺言のメリットは?
「公正証書」というのは、公証役場の公証人が作成する公文書のことをいいます。
なんか、同じ言葉を繰り返しているような説明ですが、要するに(誤解を恐れずにいえば)公文書にすることによって、文書に「力(ちから)」を与えることができるようになります。証明力が高くなり、執行力(強制執行できるようになる)を与えたりできます。
「公証人」とは、裁判官や検察官などを退任した人が就任する、法律の専門家です。
遺言を公正証書にすることによって、
遺言の有効性を高め(第三者の専門家である公証人が関与するので、遺言者の能力に問題が生じにくく、改ざんもまず起こらない)
家庭裁判所の検認が不要になり(遺言者の本人確認や保管を公証人が行うので、問題になりにくい)
紛失のリスクがなくなる(保管を公証役場が行い、遺言者が亡くなった後は全国どこからでも検索ができる)
ことになります。
どこに行って作るの?
公証役場に行って作ります。
全国どこの公証役場でも構いません。
病院や自宅などに出張して作成してもらうことも可能です。
ただし、この場合、公証人の所属法務局の管轄内しか主張することができません。
また、旅費や日当が必要になります。
何が必要?
遺言をする際に必要な資料は次のとおりです。
・遺言をする方の印鑑登録証明書(発行後3ヶ月以内のもの)1通
または公の機関発行の写真付き身分証明書
・遺言者と相続人との関係がわかる戸籍謄本
・財産を相続人以外の人に遺贈する場合は、その人の住民票
・相続させ又は遺贈する財産のなかに
①不動産がある場合は、土地、建物の登記簿謄本及び固定資産評価証明書
②不動産以外(預貯金、動産等)の場合は、通帳その他メモ(内容が特定できれば大丈夫です。)
また、利害関係のない(相続人や受贈者でない)証人が2人必要です。
その際、証人の氏名、住所、生年月日、職業が分かるものと、印鑑(実印でなくともいい)を用意します。
見つからない場合は、公証役場で用意してもらえます(日当などが必要です。)。
どうやって作るの?
公証役場に予約をして、決められた日に公証役場に赴き、公証人の前で遺言したい内容を口授(口で話す)することで作成できます。
というと簡単ですが、事前にどのような内容の遺言にするかを決めておくのが通常です。
ある程度簡単な内容であれば、公証人に相談することも可能ですが、「どのような遺言にするべきか」「この内容の遺言を作った場合、どのようなリスクがあるか」という実質的な相談は、弁護士等に相談するべきでしょう。
弁護士が代理人として遺言案を作った場合、公証人との事前調整はすべて弁護士が行いますので、安心です。
いくらかかるの?
「公証人手数料令」というルールで、全国一律の費用が決まっています。
遺言によって相続する人ごとに次の表に従って、費用を計算します。
(日本公証人連合会HPより)
これを合算したものが公正証書遺言の手数料になります。
作った後は?
遺言者は、公証人から遺言公正証書の「正本」と「謄本」が渡されます。
「原本」は公証役場で保管されます。公証役場では、この原本を電磁的記録にして、「二重に」保管する扱いになったようです。
「正本」とは、原本と同一内容で、効力のある遺言になります。
「謄本」は原本の写しです。
遺言者が亡くなるまでは、推定相続人(相続人となるべき人)をはじめ、遺言者以外はだれも内容を確認できません。
逆に、遺言者が亡くなった後であれば、どこの公証役場でも公正証書遺言の「検索」ができますので、遺言が残っていないかどうかのチェックはしておきましょう。