100通りの夫婦があれば100通りの離婚がある

弁護士に「離婚問題」で相談に来られる方には、いろいろいらっしゃいます。
離婚すると決意した方はもちろん、相手から離婚を切り出されて困っている方、離婚しようかどうか迷っている方、現在は離婚を考えていないけど、将来のための準備として相談に来られる方などなど。

夫婦関係は、100組いれば100通りあります。2つとして同じ夫婦はありません。
ナーバスな問題ですから、他人に相談しにくいという面があることはもちろんです。
でも、専門家の意見を聞かずに、「友人のところはこうだった」「離婚した友人はこういうアドバイスをくれた」と自分で判断してしまうのは、後悔や失敗の元。

置かれている立場、これからの方針によって、必要なアドバイスは全く異なります。これからの連載で離婚に関する一般的な説明はいたしますが、具体的な事案に関しては、そのときそのときで、遠慮なく弁護士に相談してください。
弁護士のアドバイスによって見通しが生まれることで、考えがまとまったり、決断ができたりします。

また、離婚は男女の問題ですので、あなたの意思がもっとも重要です。
いったん弁護士に依頼した後であっても、お考えが変わった場合は遠慮なく言ってください。決断を変えることであなたのことを責めたりはしません。身の安全や取り返しの付かない問題がない限り、弁護士はあなたの決断を尊重いたします。

離婚前に離婚後を考える

あなたが離婚を考えるとき、しっかり離婚後の生活をイメージしておく必要があります。
離婚自体は目的や目標ではなく、新しい生活のスタートなのですから。

仕事はどうするのか、子供との関わりはどうするのか、別れた後の元配偶者との関係も考えなくてはいけない場面もあるでしょう。

具体的にイメージできますか?

あなたが離婚を決めるのであれば、あなた自身が幸せになる決断でなければいけません。
そして、それは相手を不幸にすることではありません。

住むところを考える

離婚する場合、どこかのタイミングで必ず別居することになります。
いつ別居するのか、どちらが出て行くのか、賃貸の場合、持ち家の場合等、様々な場合がありますが、どうすべきか決めなければなりません。

そのときに考えたいことを挙げてみます。

生活費を考える(婚姻費用・民法760条)

別居してから(同居中であっても生活費が支払われない場合も含む)離婚するまでの間には、原則として収入の高い方から低い方に対して「婚姻費用」という生活費を支払う法的な扶養義務があります。

 子供の有無、年齢、どちらが子供を育てる(養育監護する)か、子供の学校が公立か私立か、住宅ローンの有無、等によって変わりますが、ざっくりとした概算としては、裁判所のホームページに掲載されている「養育費・婚姻費用算定表」をご覧になると金額のイメージがつくかと思います。

養育費・婚姻費用算定表 – 裁判所

※別居前に相手方の収入資料等はコピーしておく等、同居しているからこそできる資料収集はしておいてください。相手方の収入がわからない人は区役所で課税証明書を取得しておくといいでしょう。

離婚が成立したら、あなた自身の生活費は誰も出してくれません。
離婚後の生活設計も予め立てておく必要があります!

社会保障の検討を考える

シングルマザーになる場合には、様々な社会保障の制度があります。
自分自身に収入が少なく、夫からの婚姻費用や養育費にもあまり期待ができないような場合、どのような社会保障制度があるのかは知っておく必要があるでしょう。

どちらが家を出るべきか

ケースバイケースなので、一概には言えませんが、夫名義の持ち家の場合であっても、必ずこちらが家を出なければならないわけではありません。
財産分与では、婚姻期間や不動産購入での貢献度等に応じて、不動産の分与を求めることもできますこともあります。もっとも、住宅ローンが残っている場合、事実上、離婚後のローン負担を自分でしていけるかという問題は検討する必要があります。

離婚したいのに相手が応じてくれない場合には、まず別居期間を積み重ねることで「婚姻関係が破綻している状況」を作り出す必要があるので、離婚したいと考える側が出て行かざるを得ないこともあるでしょう。

ただし、家を出る=持ち家を諦める、ではありません。所有権と事実状態は別のことなので、きちんと分けて考えましょう。
賃貸の場合、名義人がどちらかと言う問題がありますが、借りた時の名義人でない方が自宅に残る場合、大家さんにその旨を知らせて、賃借人の名義変更をする必要があります。居住実態が変わらないのであれば、原則として賃貸借契約の解除事由にはなりません。

子供を連れていくことについて

離婚後の親権を決めるにあたっては、子の福祉の観点がもっとも重視されます。

そこで子供の親権を獲得するためには、子供を連れて別居しなければならないと考えて、配偶者に無断で家を出ようとするケースが散見されます。しかしながら、別居にあたって子供を連れて出ることには慎重にならなければなりません。

親権者であっても、共同親権者に無断で連れ去ることは、未成年者略取罪(刑法224条)が成立する可能性があります。

また、ハーグ条約加盟後、裁判所も子の連れ去りについてはより厳しい目で見る傾向があります。

無断で連れ去ってしまったがために、かえって本来であれば得られていたであろう親権を失ってしまうことになりかねません、

別居の際に、子供を連れて行くには

①配偶者と協議する
②家庭裁判所に子の監護権者の指定の審判の申立をする

といった正攻法をとっていくことが、将来の親権獲得に向けてむしろ近道です。

 

離婚を考えたら、まずは弁護士に相談を。